窓にのこった風 電子書籍版
305円(税込)
作品内容
ある日忽然と、ぼくの前から姿を消した妻・芽衣子。個展を前にして芽衣子が借りていた海辺のアトリエ。そこに残されていたのは6枚の窓の絵と、1羽の青いオームだった。絵は2枚ずつ赤、青、黄の三原色に塗られ、額のガラスはみな叩き割られていた。そしてオームは喋りだす「いいか、これが君と彼女との生活の結果なんだ」と。ぼくは考えねばならない。芽衣子とは何者か。ぼくとは一体誰なのか。オームが裁判官であり、ぼくが被告だった。網膜の裏には、芽衣子の躯と顔が輪郭を残して揺れている。これが、長い夏の始まりだった――。自己不在から脱却しようともがく主人公を通して、社会の中で永遠に開放されぬ迷路に住まう我々人間へ宛てた、文学の贈り物。
作品情報
作者の関連作品作者の作品一覧