漂流する日本人、行き詰まる人類 電子書籍版
1100円(税込)
作品内容
2011年3月11日の大地震大津波による福島第一原発の事故が日本人ひとりひとりにもたらした詰問――本当に原発は必要なのか。世界で唯一の被爆国日本、広島・長崎の悲惨さを知る国がなぜ、原発大国に突っ走ってしまったのか。太平洋戦争の戦中戦後から初の商用原子炉導入に至るまでの政治家・科学者、そして国民の動向を心理的側面から分析し、人間の理性と本能の問題を提起。人間は理性をもつことができできる存在だが、その理性は下司な欲望を秘めた内なる本能に搦め手で攻められると敗れやすい。名誉欲、金銭欲、憎悪、嫉妬、敵愾心……。著者は、これまでの人類の歴史は理性が本能に敗れてきた歴史だとし、もし人類が総体において理性が本能を抑えてきていたのだとしたら、もっと違う世界が現出しているはずだと説く。そのうえで、真の理性を磨ききれなくなっている人類はやがて行き詰まるだろうと予言。その行き詰まりを回避するためにも、いまこそ必要なのは、ひとりひとりが「真の理性」「強い理性」を育てることだと強調する。〈目次〉はじめに~いまこそ「真の理性」「力強い理性」を育てなければならないとき第一章 人類の歴史は、理性が本能に敗れてきた歴史 ■不都合な真実が露呈しそうなときにとる人間の三つの行動パターン ■理性には二種類ある――真性理性と偽性理性 ■『生きる』ことを基盤に、さまざまな本能があらわれる第二章 日本の原子力開発に見る「理性の敗北」 ■戦後、巧みに誘導された「原子力→平和」のイメージ ■経験から学び、考えることで理性を獲得する――ヘーゲルの弁証法とカントの理論 ■原発事故後に見られた人間行動の三パターン第三章 科学者はなぜ政治に敗れるのか ■科学者が理性的な行動をするとは限らない ■油断すると、理性は本能に敗れる ■敗戦から二年後にあらわれた「原子力利用の風潮」 ■一枚岩ではなかった〈科学者の国会〉日本学術会議第四章 暗躍する政治家たち ■政治家がバラまいた科学者への甘いエサ ■原子力研究の再開に反対した広島大学三村剛昂教授 ■科学者のうちに渦巻いている本能「研究欲望」第五章 走り出した幻想「核の平和利用」 ■米アイゼンハワー大統領の「核の平和利用」演説 ■日本学術会議が提示した原子力研究三原則「自主・民主・公開」 ■外からは放射能の洗礼、内では札束で頭を殴られた科学者 ■アメリカが公にしたくなかった「不都合な真実」第六章 湯川秀樹と坂田昌一の辞任問題 ■加速化する政治主導の動き――「原子力は万能マシン?」洗脳される国民 ■湯川秀樹が原子力員会委員を辞任 ■ソクラテスの「無知の知」を思い起こさせる湯川秀樹の言葉 ■日本学術会議の発言力を削ぐ「科学技術会議」構想 ■問題点を置き去りにして進む原子力政策 ■大勢に逆らい奮闘する物理科学者・坂田昌一 ■深刻だったイギリス・ウィンズケールで発生した原子炉事故第七章 日本最初の商用原発の安全性をめぐる攻防 ■無視された坂田昌一の要望書 ■坂田昌一の正論を肩書論にすり替えた中曽根康弘原子力委員長 ■国会で再び議論の対象になった坂田問題 ■神近市子の痛撃――合同審査は「家庭教師が入学試験をするようなもの」 ■岡良夫の追及――実験証明なしの安全宣言は科学者にあるまじき態度だ ■東京大学・藤本陽一教授の指摘――原子力委員会専門部会の審査機構は機能しなかった ■原発事故の被害想定試算データの公表を封印した政府 ■原子炉は本当に安全なのか――それは歴史が判断すると強弁した中曽根康弘 ■このとき、日本学術会議会長は何をしたのか ■歴史が中曽根康弘の強弁を否定した第八章 広島、長崎への原爆投下はなぜ避けられなかったのか ■原子の「連鎖反応」と「臨界質量」 ■原爆の開発製造を諦めたイギリス ■具体的に動き出したマンハッタン計画 ■ウラン235を使う銃型方式とプルトニウムを使う爆縮方式 ■原爆使用阻止に動いたレオ・シラード第九章 科学者の責任、政治家の責任 ■理論が証明されるまで本能を抑えられない科学者 ■一歩遅れた「理性」の復活 ■ハイゼンベルクは意識的にドイツの原爆開発を遅らせたのか? ■マンハッタン計画から離脱した科学者ロートブラット ■ボーアに手紙を書いたアインシュタイン ■トルーマンの資質に疑問を感じていたアインシュタイン ■日本の原爆製造「ニ号研究」の中心人物・仁科芳雄 ■仁科芳雄の「原爆製造は可能」の判断は正しかったのか ■トルーマンは名誉欲のために判断を誤った ■理想世界構築のためのひとりひとりの内なる本能との闘い
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