国際紛争はなぜ起こるのか? 冷戦後の国際秩序の形成とシリア紛争への対応 改訂版 電子書籍版
330円(税込)
作品内容
昨年11月に本書を電子書籍として出版したが、急拵えで作成したため、いずれ見直しを行うつもりであった。本改訂版は、なお完全なものとは思っていないが、その後、表現が不適切、不十分と気づいた箇所に修正を施すとともに、一部新たな内容を追加したものである。本書を出版してから、2014年6月17日までの間に、シリアをめぐる混迷が終息に向かう兆しは見られず、隣国のイラクは、宗派、民族による分断の様相を強め、スンニ派の過激派集団が北部の主要都市を制圧するなど著しい情勢の悪化をみている。また、南スーダン、ウクライナなどにおいて、民族、宗教・宗派の違いに起因する紛争が新たに発生した。今回の追加・修正には、一部こうした新しい情勢を踏まえ対応策等についてより詳しく説明した箇所もあるが、第1版でお示しした基本的な認識に変更は一切加えていない。世界全体の平和・安定を維持していくために必要なものとして課せられつつある秩序がどのような考え方に従って形成された如何なるものであるか、この全体の枠組みに実質的な変動がない以上、その枠組みの中にある一つの国家内で、根本的に異なる文化・価値を有する民族(宗教、宗派を含む。以下同様)が、独自性を保つための十分なルールもなしに共存することによって如何なる事態が招来されるかは、民族というものの本質が変わるものではないのだから、今後とも変化することはなく、同様の事態の発生と展開をみることは何の不思議もないことである。(本書「改訂版の出版にあたって」より)冷戦後の世界においては、試行錯誤を経ながら、ある共通の秩序が形成されつつある。他方で、その秩序の形成は、一定の条件に置かれた民族・宗派の間に、必然的に悲惨な紛争をもたらした。本書は、「民族・宗派」、「共通の秩序」、「文化・価値」など前提となる概念について確認しながら、これらの国際紛争をどう理解すべきか、また、これまでの教訓も踏まえ、この種の紛争等に、「共通の秩序」と整合性をもったどのような一貫した対応を行っていくべきかについて、できるだけ客観的な視点に立って説明し、広範な認識の共有をもたらそうとするものである。外交の専門家である著者が提示したこれら認識は、さまざまな異なる文化が対峙している現在、人びとが多様性を保ちつつ、平和と安定の下に共存していく上で、必要なものであろう。1まえがき2冷戦後の国際紛争に関する不適切な認識あるいは整理の不徹底(1)ユーゴ紛争(I)-民族間の闘争が必然であったことについて1基本的な誤り-民族・宗派の自文化・価値への執着に対する認識不足2やや詳しい説明-民族はなぜ一定の条件下で争わなければならないのか。3第二次大戦後の国際規範、なぜ近年民族紛争が多発したか4これまでの整理の不適切(民族・宗派が争わざるを得ないことへの認識不足)の結果(2)ユーゴ紛争(II)-介入は単に人道のためだけではないこと(3)イラク戦争(I)-国際秩序、国連決議との関係など1前提として2点の誤りの確認2国連決議との関係をどのように捉えるべきか3併せて大量破壊兵器の問題について(4)イラク戦争(II)-主要民族(宗派)の合意したルールの下での共存3今後の対応について(1)国際秩序と「民族」、「宗派」の本質を踏まえた関与の必要性(2)対話による解決の試み(3)軍事介入を念頭に置いた解決を図る場合(2つの重要な判断)(4)介入に際しての基本的な考え方4おわりに
作品情報
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