“円熟脳”のすすめ 電子書籍版
1430円(税込)
作品内容
「快感」とともに「円熟」もある年をとれば人間の肉体は衰えます。どんなにトレーニングしても、年をとればスポーツの記録は落ちてきますし、視力や聴力、あるいは生殖力といった能力も低下します。肉体の衰えが進めば、さまざまな障害も発生し、それまで一人でできたことでも、身体の自由がきかなくなって人の助けが必要なことも多くなります。そして、最後は一人で死んでいきます。ただし、これはあくまでも老いるということを、生物として、動物としてだけ見た場合の話です。しかし、ヒトはただの動物ではありません。発達した脳を持ち、その脳の働きによって、五感を通じて、考え、快楽を追求する「幻想の動物」なのです。食物を摂取し排泄して自己保存をはかり、生殖をして子孫を残すことに生きている動物といっしょに論じることはできないのです。ヒトはいわば「脳の動物」です。ヒトが直立歩行をはじめてから四百万年。直立歩行によって、手が自由になって、道具を使えるようになりました。そして、長い年月をすごすうちに脳が巨大化し、動物脳をつつみこむようにして、新しい学習する脳の層ができました。この新しい脳は、動物にはない新しい快感を生み出したのです。動物もヒトも快感を求めて生きている点では同じですが、動物は食欲、性欲、そして群れる、という本能が満たされれば、それで満足します。ところがヒトの場合は、学習することによって、本能以外にもさまざまな文化的なものを充足することで、より深く、より質の高い「快感」が得られるようになったのです。それは、快楽、あるいは「けらく」と呼ぶにふさわしいものです。こういった深い快感のあるなしが、動物とヒトとの大きな相違点といえます。「はじめに」より
作品情報
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