政治哲学講義 悪さ加減をどう選ぶか 電子書籍版
990円(税込)
作品内容
正しさとは何かを探究してきた政治哲学。向き合う現実の世界は進むも退くも地獄、「よりマシな悪」を選んでなんぼの側面をもつ。命の重さに違いはあるのか。汚い手段は許されるか。大義のために家族や友情を犠牲にできるか。本書はサンデルの正義論やトロッコ問題のような思考実験に加え、小説や戯曲の名場面を道しるべに、「正しさ」ではなく「悪さ」というネガから政治哲学へいざなう。混迷の時代に灯火をともす一書。【目次】はじめに正義論に残された問い 作品で読み解く第1章 「悪さ加減の選択」――ビリー・バッドの運命1 選択のジレンマ性ジレンマとは何か 損失の不可避性 損失の不可逆性2 政治のジレンマ性政治とは何か 公共の利益 利害の対立3 マシな悪の倫理マシな悪とは何か 三つの特徴 行為と結果の組み合わせ4 まとめ――政治の悲劇性第2章 国家と個人――アンティゴネーとクレオーンの対立1 偏向的観点と不偏的観点偏向的観点 不偏的観点2 不偏的観点と政治法の下の平等 具体例(1) 政治腐敗 具体例(2) 国連活動3 不偏的観点と個人インテグリティと政治 国家と個人・再考4 まとめ――クレオーンの苦悩と悲嘆第3章 多数と少数――邸宅の火事でフェヌロンを救う理由1 数の問題規範理論(1) 功利主義 特徴(1) 総和主義 特徴(2) 帰結主義2 総和主義の是非人格の別個性 権利論 権利は絶対的か3 帰結主義の是非規範理論(2) 義務論 マシな悪の倫理・再考 義務論的制約4 まとめ――ゴドウィンの変化第4章 無危害と善行――ハイジャック機を違法に撃墜する1 トロリーの思考実験具体例ドイツ航空安全法 「問題」前史2 消極的義務と積極的義務義務の対照性 優先テーゼ3 トロリー問題「問題」の発見 手段原理 航空安全法判決4 まとめ――制約をあえて乗り越える第5章 目的と手段――サルトルと「汚れた手」の問題1 汚れた手という問題理解(1)マキァヴェリの場合 理解(2) ウォルツァーの場合2 いつ手は汚れるか印としての罪悪感 罪の内実3 いつ手を汚すか指針(1)絶対主義 指針(2) 規則功利主義 指針(3) 閾値義務論 制度化の問題4 まとめ――サルトルと現実政治第6章 自国と世界――ジェリビー夫人の望遠鏡的博愛1 一般義務と特別義務不偏的観点・再考 偏向的観点・再考 偏向テーゼ2 特別義務の理由理由(1)道具的議論 理由(2) 制度的議論 理由(3) 関係的議論3 特別義務の限界不偏テーゼ 消極的義務・再考 積極的義務・再考4 まとめ――慈悲は家からはじまり……第7章 戦争と犠牲――ローン・サバイバーの葛藤1 民間人と戦闘員民間人の保護 戦闘員の保護2 民間人への付随的損害二重結果説 民間人か自国民か 具体例 ガザ紛争3 民間人への意図的加害個人が陥る緊急事態 国家が陥る緊急事態 偏向的観点・再再考4 まとめ――戦闘員の信念と部族の決意第8章 選択と責任――カミュが描く「正義の人びと」1 選択を引き受ける規範理論(3) 徳倫理学 インテグリティと政治・再考 心情倫理と責任倫理2 責任を引き受ける指針(1)メルロ=ポンティの場合 指針(2) カミュの場合3 「悪さ加減の選択」と私たち民主的な汚れた手 責任を政治的に引き受ける 具体例 アルジェリア問題4 まとめ――サルトル=カミュ論争終 章 政治哲学の行方AIと「悪さ加減の選択」 AI時代の政治哲学あとがき読書・作品案内引用・参考文献
作品情報
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