粘着の人 ストーカーという名の宿痾 電子書籍版
1760円(税込)
作品内容
ストーカーとは何者かストーカー殺人――。また起きてしまった。どれだけ繰り返されれば、ストーカーによる凶行はなくなるのだろうか。ストーカー事件が社会に与える衝撃はとても大きい。被害者が警察に何度も相談していたにもかかわらず、守りきれずに、悲しい結末を迎えることが多いからだろう。そのため事件のたびに、「警察がもっと早く、しっかり対応すべき」「刑罰をもっと厳しくすべき」といった議論が繰り返されてきた。その議論が最初に巻き起こったのが一九九九年に埼玉県桶川市で起きたストーカー殺人事件だった。事件の衝撃とともに、警察のずさんな対応が社会問題にもなった。すぐさま翌年の二〇〇〇年にはストーカー規制法が成立。ストーカー行為自体が犯罪となった。以来、事件が起きるたびに警察の対応の不手際、法律の不備などさまざまな問題点が浮き彫りになり、法律の改正、警察での対応の改善などが行われてきた。以来、四半世紀もの時が流れた。しかし、ストーカーによる凶悪事件は毎年のように起こり続けている。警察の対応に改善すべき問題があることは間違いない。法律をより良いものにしていく必要性も感じる。ただそれだけではこの先もずっと解決しないだろうことに薄々気付いている人もいるはずだ。では何が足りないのか。私は議論を進めるうえで最初に知るべき重要な視点が抜け落ちていると感じている。それはストーカーの本質、つまりストーカーとは何者かということに目が向けられていないということ。多くの人はストーカー自体を軽く考えたまま、議論が進められてきたのではないかと思うのだ。やるやつは、やる。刑務所に収監されようとも、たとえ死刑になるとしても。“粘着の人”に警察や法律は関係ない。
作品情報
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