しゅうまつのやわらかな、 電子書籍版
1980円(税込)
作品内容
忘却と喪失。停滞と安寧。異端の言語感覚で綴られる、過ぎ去った日々の心象。随筆。小説。詩。日記。変幻自在に境界を超える筆致が織りなす待望の随想集。装画:つくみず装丁:名久井直子――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――小さなころの夢は石になることで、いま夢みるのも石になること。もの言わず、もったりと、ただそこにあるだけのものでありたい。水と風に磨かれて、つやつやしたからだにひかりを溜めていたい。ときどき拾われて、飾られたり投げられたりするのも、悪くない。むきだしのみじめさを武器にも鎧にもしないで、そこにありたい。『石の日』より……きっと、何者にもなれない。そんな言葉を聞いて、煮物にもなれない、と思った。何者にもなれない、という十の音のつらなりは、その九つを煮物にもなれないが占める。『煮物にもなれない』よりことばはすべて、こころの翻訳だから、決して明かされない秘密を持っている。ちょうど湖の水を手にすくいとったとき、手の中の水はもう湖ではないように、そんなふうにしかことばをあつかうことはできないのだと、しずかにあきらめている。『コンサバ』より深淵をのぞくとき深淵もまたひとりぼっち。しーん。えーん。『めそめそメソッド』より神は細部に宿るのではなく、細部を見つめる視線に宿る。それか、細部にすました耳に。こまやかさをこぼさないよう、ふるえる手つきの中に。『ゴッホとズボン』より――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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